遺産分割協議と遺産分割協議書

被相続人が亡くなり相続が発生したが、被相続人が遺言を残していない場合、被相続人の財産をどのように分けるかを決めるため相続人で遺産分割協議を行うことになります。

相続人間で遺産分割協議を行い、遺産分割協議書を作成し、その作成した遺産分割協議書の内容に従って相続財産を分けるのです。遺産分割協議をしなければ、いつまでも相続財産を分けることができません。この遺産分割協議は、必ずしも全員が一同に集まって行う必要はなく、全員が協議内容に合意していれば問題ありません。

遺産分割協議がまとまったら、遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書は、相続人全員が署名・捺印し、全員分を作成して、各人がそれぞれ保管します。遺産分割協議書がなければ、不動産の所有権の移転登記などの相続手続きが行えません。

逆に言うと、遺産分割協議書があれば、これらの相続手続きを行うことができます。そのため、相続人の1人又は複数人が結託して、勝手に遺産分割協議書を作成し、署名・捺印をあなたに迫ってくるようなことがあるかもしれません。実際にそのような相談を受けたことがあります。相談者は内容もよく告げられていないのに、「いいから、これに署名・捺印しろ」と迫られたそうです。

このようなケースで安易に署名・捺印してしまうと、当然、不動産の所有権移転手続きなどが進んでしまいます。遺産分割協議書の内容をきちんと確認して、内容に納得できない場合は、絶対に署名・捺印しないで、専門家である弁護士にご相談ください。

また、専門家を入れずに相続人同士で遺産分割協議を行う場合、事前に専門家である弁護士に相談だけでもしておく方が良いでしょう。弁護士があなたの状況や要望を聞き取った上で、遺産分割協議を行ううえで注意すべきことや、どのような内容の遺産分割協議書を作成すべきか、アドバイスをしてくれます。

特に、あなたと他の相続人とがもめそうな場合には、弁護士に相談される方よいです。他の相続人を説得するための対処方法などをアドバイスすることができるからです。

さらに、場合によっては、そもそも遺産分割協議自体を弁護士に代理してもらった方が良い場合もあります。

例えば…
・当事者同士では、遺産分割協議がまとまりそうにない場合
・他の相続人が理不尽な要求をしている場合
・他の相続人が理不尽な要求をしているが、力関係が不利な場合
・相手が口達者で、丸め込まれてしまいそうな場合
・他の相続人同士が結託している場合
・他の相続人が、税理士など、第三者からのアドバイスを受けている場合
・自分で、他の相続人と交渉し、遺産分割協議を行うことが精神的に苦痛である場合

などです。

このような場合は、弁護士に遺産分割協議を代理してもらい、代わりに話し合ってもらうことも１つの方法です。

弁護士に代理人としての交渉を依頼した場合、当然、弁護士は調停や裁判になった場合の結果を踏まえて交渉を行いますし、あなたの要望にできるだけ沿うように、証拠を集め、相手を説得する方法を考えます。

遺産分割協議が長期化して、調停や裁判に移行するよりも、早い段階で、専門家に交渉を任せた方が、結果として、スピーディーで、あなたの希望に沿った解決につながることもあります。

遺産分割協議に不安がある場合や、揉めそうな場合、揉めている場合は、依頼するかどうかは別にしても一度、専門家である弁護士にご相談されることをお勧めいたします。